香川 瀬戸内で「観光」から「感幸」へ
岡山、香川両県の島々を舞台にした現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2016」(同実行委主催)が20日開幕した。3回目となる今年は12島14会場、春・夏・秋の3会期のスタイルを踏襲しつつ、参加アーティストは前回の200組を上回る。「海の復権」に向け、グレードアップする芸術祭の魅力について、実行委の北川フラム総合ディレクターに聞いた。
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美しいものを見る「観光」から、幸せを感じる「感幸」になりたいというのが芸術祭の出発点。アートによって島の特色を明らかにしようとしてきたが、実際、船に乗って会場の島々を巡り、島ごとに違う文化に出合った驚きがリピーターを呼び込み、93万人、107万人という過去2回の来場者数につながったと思う。
来場者アンケートによると、島の人と話したり、島の行事に参加したり、ただ見るだけでなく体験に感動した人が多かった。アート作品や島の美しさだけでなく、都市住民が地方を求めて動く底流に合致したと考えている。
これまでになく高まっているのが海外からの関心。アジア各国は、地域振興のモデルとして期待している。欧米は自己実現を目指す20世紀型のアートではなく、地球環境時代の新たなアートのあり方として注目しているようだ。
今回は来場者数の目標を掲げない。前回並みで十分。それより体験の質を高めたいと考えている。特に力を入れるのは、アジアとの交流と食だ。
瀬戸内と海でつながるアジアとは、もっと付き合いを深めないといけない。前回、小豆島の廃校を改装した「福武ハウス」、夏の高松港に開設する「瀬戸内アジア村」を拠点に、各地の生活文化などを紹介するとともに、それぞれの島にも大道芸やダンスなどパフォーミングアーツを派遣して、島の人たちに国際交流を楽しんでもらいたい。
食は瀬戸内の一番の魅力。伊吹島のイリコなど地元の食材を面白い形で出そうとする動きが出てきている。レストランばかりでなく、手軽な弁当として提供する準備も進めており、ぜひ島ならではの味を楽しんでほしい。
芸術祭は3年に1回のお祭りのように見えるかもしれないが、その間も私たちは日常的に島に入り、道普請から文化祭まで人々の縁を結んできた。島のおじいちゃん、おばあちゃんの笑顔、一生懸命生きてきた誇りを、ぜひ現地で感じてほしい。
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参考
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